2016.1.13(水)  1月13日

11日の朝は、珍しく激しい雨が降っていた。
冬のロンドンの重たい朝が、もっともっと沈み込むような重たい朝だった。

前の夜、寝る前に夫が自分の部屋から出て来て
「Blackstarをハイレゾのヘッドフォンで聴いてた!すごいよ!」・・
と嬉しそうに言った。
「私も明日聴く!」と話し、彼はそれからも「やっぱりすごいわ・・」
と呟きながら寝室に入って行った。
大のDavid Bowieファンとして、彼は幸せそうだった。
また果敢に新しい提示をしてくるBowieに、敬愛するロックスターの生き方を見て感じて、
胸がすく思いだったのではないだろうか・・・。
すぐ夢の中に入って行った彼はどんな夢をみたのだろう・・・。



翌朝、目覚めてすぐに立ち上げた私のiPhoneの画面に表れたのは、BBCの速報だった。
Rock legend David Bowie has died 〜

え、何・・?

目を疑ったが、なにか新しいアルバム曲の演出で・・・とか、そんなことかな、きっと・・と、
私はキッチンで朝の支度を始めた。

そのうち娘が降りて来て、そして、まだ寝ていると思っていた夫がフラフラと入ってきた。
そして、絞り出すような声で、「デヴィッドさんが死んじゃった・・」・・と言った。


・・・絶句して息が止まりそうだった。


思わず夫を抱きしめて、抜け殻になった大きな体を支えた。


敬愛するアーティストの素晴らしさに心震わせてから6時間後。

その悲しみは、想像をはるかに超える衝撃で、彼を、そして私を貫いた。






何もできずに一日が終わった気がする。
一日中David Bowieを聴いていた。


悲しみをこらえて、黙ったまま日々のルーティーンをこなしていく夫の背中を見ていると
何度も何度も涙が溢れた。

実際はそんなにビッグファンというほどでもなかった私も、
彼の曲を聴き、彼の話をする時にはまるで高校生の男の子のような瞳になる夫を通して
いつのまにかDavid Bowieの世界にintoしていた。


夫から幾度となく聞いているDavid Bowieという存在の凄さ。
もう二日たった今もBowieの曲しか聴きたくなく、朝からずっとかけている。
そしていつのまにか私もすっかりDavid Bowieという最高の芸術に心を奪われていた・・。



でも、“崇高なアーティスト”であるだけでなく、夫が愛する素敵な人、
ということが私の心には染みている。


以前、彼の武道館のライブ後にお会いしたことがある。
久しぶりの再会に、美しい笑顔で「Hi! Hoteiサン !!」
とwelcomeしてくださった時のあの声を思い出す。

急にレンズを向けられて大泣きするまだ小さな我が娘に、
ぺろっと下を出して微笑む彼は、私にとっては「デヴィッドさん」だ。


ピアノの上には、そんなチャーミングなデヴィッドさんが笑っている。







                                     今井美樹

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